吉祥寺『モカ』の標氏を偲んで

 吉祥寺『モカ』の標氏が他界された。美味しいCOFFEEの一角がなくなった感じで寂しい限りです。全てをCOFFEE につぎ込んで来られた方でした。

 45年ほど昔、襟立さんの「リヒト」で「モカ」さんのお話を聞いたのが最初です。「非常にCOFFEEに熱心な青年が訪ねて来て、教えて欲しいと懇願された。熱心さにほだされて教えてあげようと思っている・・・」とのお話でした。その後、私がCOFFEE店を開いて、生涯の仕事にしよう!と思い襟立氏にお願いをし、お教えを頂いた。倉敷の「珈琲館」を教えている時期でもあった。3人の生徒ができた具合でした。

 標氏とは訪ねたり、訪ねられたりして、たくさんのご意見を頂いた。ある時は、井上誠氏ともご一緒させて頂いた。海外のコーヒー店のお話も頂いた。北欧の旅では、焙煎屋さんが無人で自動焙煎をされていたのを見て、無人はケシカラン!と憤慨されていた。
 自身でCOFFEEを淹れていただき、濃い一杯を堪能させて頂いた時もあり、豆を貸して欲しいと云われてお送りした時もあった。本当のCOFFEE一筋の方で、愛妻家で何時も和子夫人とご一緒でした・・・先日、自宅へ訪問し、お線香を上げさせて頂いた折、奥さんが「私よりCOFFEEの方が大事に思っていた様に思う」と言っておられたのが特に印象的でした。しかし、奥さんに助けられ、甘えられながら、だから頑張れたのでしょう。

 吉祥寺も新しいCOFFEE屋の波に巻き込まれて、変貌を遂げている。が、一時代を創ってこられた標氏の道は多くの愛好家には忘れられない良きCOFFEEであったと思う。